5章
ディジュリドゥ・プレイヤーとして
BLACK MUSIC FROM JIROKICHI(1996年)
今まで野外コンサートやイベントは随分やってきたが、形に残ることもして
みたい。長くやっているライブハウスには自分のレーベルを持っている所も多
い。ここはひとつ「JIROKICHIレーベル」を設立して、気に入ったセ
ッションを組んでライブレコーディング、CDを作ったら、発売記念のライブ、
あわよくばツアーも…そんな期待を胸に思いついたのが、本田竹広(ピアノ)、
塩次伸二(ギター)、ポール・ジャクソン(ベース)、ハイタイド・ハリス(ヴ
ォーカル)、そしてマーティ・ブレイシー(ドラムス)というインターナショ
ナルなドリームセッションだ。
黒人3人はいずれも日本で活動中の売れっ子ミュージシャンで、ポールはハ
ービー・ハンコックのバンドにいたこともある最高にファンキーでパワフルな
ベーシストである。
話はとんとん拍子に進み、3日間のライブレコーディングを経て、次郎吉が
プロデュースする初めてのCDが完成した。日本を代表するジャズの本田さん
とブルースの伸ちゃんに、アクの強さではいずれ劣らぬ黒人3人という組み合
わせの妙が効を奏し、グルーヴ感溢れる仕上がりとなった。ポールがヴォーカ
ルをとっている「ホテル・ドミンゴ」は明るくてファンキー、俺の大好きなナ
ンバーだ。CDタイトルはシンプルに、「BLACK MUSIC FROM
JIROKICHI」とした。
次郎吉初プロデュースのライブアルバムという触れ込みで、上野ジャズフェ
スを皮切りに関西ツアー、四国ツアーを敢行。俺はツアーマネージャーとして
同行した。ホンモノのブルースを聞けるセッションバンドということで、どこ
のライブハウスでも歓待を受け、お客の入りも上々だった。
俺も久々のツアーを楽しんだが、困ったのは、メンバー全員あまり協調性が
なく、しかも黒人3人は在日歴が10年以上になるにもかかわらず日本語があま
りしゃべれないことだ。朝ホテルで朝食をとるためにレストランに行くと、必
ず1番最初に来てもう食べているのはポール、次が俺。伸ちゃんはすでにどこ
かに遊びに行っていて部屋はもぬけのから。ハイタイドは寝てるんだかちっと
も降りてこない。ようやく姿を現した時にはもう朝食は下げられた後で、「ブ
ルースマンが朝早くから飯食えるか」と言って(英語なのでよくわからないが
多分そんなことだと思う)怒り出す。やたらと自己主張の強いハイタイドが出
て来るといつも話がややこしくなり、本田さんが言ってきかせるという珍しい
場面もあった。発売記念ライブは新宿の日清パワーステーションで行った。
この時シークレットでハイロウズ(甲本ヒロト)が出演。ハイロウズの出演
に関しては、口コミだけだったにもかかわらず、ヒロトのファンがどっと押し
寄せた。
シークレットライブが大流行
常連ミュージシャンが知り合いの芸能人や大物アーティストを連れて来て、
演奏に飛び入りしたり、それが縁で極秘のライブをしてくれたりすることがよ
くあった。
小室等のライブに現れたのは井上陽水。カウンターに座っているだけで、オ
ーラが出てくるようだ。小室さんの娘でよく次郎吉でライブをやっているゆい
さんが、「ここのチャーハン美味しいんですよ。」と勧めると、陽水さんはチ
ャーハンを注文。スタッフのタカがいつになく緊張して作ったチャーハンを食
べ終わると、おもむろに立ち上がり、一曲歌ってくれた。タカはその時のこと
を、「陽水さんはこの席に座って、チャーハンうまそうに食べてくれたんです
よー。」と得意気に話す。
テナーサックスの片山広明にサックスを習っているのは忌野清志郎。片山さ
んのバンド、デ・ガ・ショーのライブの時に、サックスを持って飛び入り出演。
この嬉しいハプニングにお客さんはびっくり。ざわめきがあちこちから起こっ
た。
次郎吉にハープを持って遊びに来てくれた甲本ヒロトは、いち早くディジュ
リドウーに興味を示し、俺が吹いているのを見て数時間の内に吹き方と循環呼
吸までマスターした。その集中力のすごさ、やはりカリスマロックンローラー
になるだけの人物である。忙しい中、短期間でディジュリドゥをモノにしたヒ
ロトに、次郎吉でシークレットライブをすることを勧めてみた。勿論その時は
俺も出させてもらう。
この時も日清パワステと同様スケジュール表に名前を出さなかったのに、店
はヒロトのファンで溢れた。恐るべし、ヒロトファンのネットワーク。ヒロト
は、ライブで初めてディジュを披露。荒削りながらも勢いのある音とリズムで
聞かせてしまうのはさすがヒロトだ。ディジュの他にも、Kyonとの掛け合
いがばっちりのリズム&ブルース、楽しいトークが間近で聞けてファンは大満
足。後半俺も出演してジョイントセッションをした。ファン以上に満足したの
はこの俺かもしれない。
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