ジミー・クリフの来日
次郎吉に初めて来た外タレは、イギリスのレゲエバンド・シマロンズだ。
彼らが来日した1975年というのは、ボブ・マーレーの来日以前で、一般の
人はレゲエという音楽の存在自体を知らず、日比谷野音でのコンサートの動員
は200人足らずだったという。呼び屋さんのビートとグレッグは次郎吉の常
連で、昼間のコンサートの後、シマロンズのメンバーを連れて次郎吉に遊びに
来てくれた。生まれてはじめて聞くナマのレゲエは、強力なインパクトを持っ
ていた。
次にやってきたのはジミー・クリフだ。映画「ハーダー・ゼイ・カム」の主
演に抜擢され、サントラ盤も大ヒット、一躍レゲエ界、というより反体制派の
若者たちのヒーローになった。ライブを次郎吉でやったわけではないのだが、
彼らは羽田からリハーサル場所として借りていた次郎吉に直行し、すぐにリハ
を開始、本番さながらの集中力で何時間も演奏するメンバーたちのスタミナは
並みの人間ではない。パーカッションの若い黒人が力あまってスティックを折
ってしまい、慌ててモップの柄を削って代用品にしたことや、ギターかベース
を弾いていた若いミュージシャンには指が6本あったことを思い出した。
レゲエのアーティストは宗教上の理由で、食べられる物に制限があるので、
バンド専属のコックが同行していた。香辛料の匂いがものすごいので宿泊先の
ホテルで調理することができず、本田さんの家の台所を借りることになった。
コックは朝から本田さんの家で仕込み、夕方になるとマイクロバスでメンバー
が本田さん宅に到着。近所の人たちが好奇の視線を送る中、赤・黄・緑のラス
ターカラーにラスターヘアのカラフルなレゲエの一行がどかどかとアパートの
階段を上って行く。俺もちゃっかり同席させてもらい、見たこともない香辛料
をふんだんに使った、アイタル・フードと呼ばれる本物のジャマイカ料理を試
食するというオイシイ体験をした。
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